組込課題・文頭

猫のような男と暮らしている。
嘘だ。うそだうそだうそだ、だって、あんなの。
今日は、僕と君だけの特別な日。
失くして気付くんじゃ、遅すぎるんだ、何事も。
欲しかったのは、億万長者みたいな贅沢な生活じゃない。

朝起きたら隣に君がいて、コーヒーの香りがしていた。
夢みたいで夢じゃない、夢見がちな話。
雨が頬を伝って、赤い唇を濡らした。
信じた自分が馬鹿だったと、気休めを口にしてみる。
馬鹿だな、と言ったら君は笑って、僕は顔を顰めた。

お前は誰も信じない。それが何だか、憎たらしい。
俺が好きだって言うと、あいつは大嫌いだって言う。
俺がいなくなったら、きっとあいつは死んでしまうだろう。
愛し愛される甘いだけの関係にはもううんざりなんだ。
愛してる。そう言われて僕は相手の頬を張り飛ばす。

純粋は不快なものでしかないんだよ、わかるかい。
ピアスの穴に見た未来は、何色だった?
あの男はおかしいほどに割烹着が似合う。
子を想うような愛情を、恋情と勘違いしているのが分からないのか。
彼は、いつも人を食ったような笑顔を浮かべてばかりだったのに。

馬鹿め、殺したいほどの憎悪が愛に変わるわけがないだろう。
ただあの余裕の笑顔を崩してみたかっただけなんだ。
強い強いと言われ続けて、私は表面ばかり強くなった。
初めて、大切にしたいと思った恋だった。
優しい笑顔なんて防衛手段に過ぎない。

友情を極めても恋情にはならないし、恋情を薄めても友情にはなり得ないのである。
一つの嘘は新たな嘘を呼び、私の罪を深めていく。





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